++春よこい++
窓の外には雪。
だけど積もらない。
日本海側の
しかも南国の宿命。
心の中で呟いて
少女は黒板へと視線を移す。
目を放していた隙に
そこにはCとHが並んでた。
たくさん。
たくさん??
少女は慌ててシャーペンを握り
教師が握った橙色の追手から
逃れることが出来た文字を懸命に拾う。
教師の声は淡々と響く。
ある冬の教室で。
少女はレースに臨みながら
それでも
斜め前の席に視線を投げた。
背筋をピンと張った少年へ。
嗚呼
春はいつ来るんだろう
「あっ!!」
心の中で呟かないうちに、
橙の追手がCとHを食べてしまった。
少女は自分の口から漏れた声に
自分で驚き、顔を赤らめる。
それから少女は十数分
少し真面目にレースに臨んだ。
チャイムが鳴って
がたがたと椅子の音が響く。
少女は拾い損ねた文字が入る筈の空白を眺めて
溜息を吐く。
「なぁ…」
顔を上げるとそこには
斜め前の男子生徒。
「ノート、書けてないんだろ?」
「何でわかるの?」
「だってお前、声あげてたじゃん。」
見せてやるよ、と言わんばかりに、
少年は自分のノートを放る。
少女はそれを受け取って、
ありがとうと口篭る。
窓の外には雪。
だけど積もらない。
もう直ぐ春だから。
春が近い国だから。
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後書き (作:風名 2009.11.25 up:11.26 )
クリスマスを書きたいなと思って テーマを雪だるまに定めようと思って作りました。
結果…どっちにも絡まなかった 残念!
テスト前なのに!というのは いつものことです。
福岡は雪 降りません。
降っても積もりません。積もっても車の上だけですね。
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