こちら、リポーターの水城可南子と申します。
今日はアイルランドの某所にある魔女集会場と噂されている建物の前に来ています。
この手作り魔女衣装からもお分かりでしょうが、10月31日ということで、日本で待つ皆様のために生中継でお送りしています。
もし私に万が一のことがあっても、日本中の皆様がその証言者です。
それでは突撃取材をかけたいと思います…
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「どーするー? 人間が家の前にいるよー!」
窓から外を眺めていた少女が、家の外にも聞こえる程の大きさで叫ぶ。窓枠に座った彼女は、ジーパンにボーダーのTシャツというラフな格好だった。
「今日なんにちだっけー?」
「10月31日だよー」
「あぁ、じゃぁいつものね。」
階下から、彼女と同じような容姿を持つ少し年上の女性…姉だろうか、が返事をする。
炊事中だったのだろう、エプロンで手を拭きながら彼女は階段をすいーっと音もなく上がってきた。
「どんな人なの?」
「アジア人??もしかしたらアジア系アメリカ人???……だけど、やっぱアジア人。」
妹は訪問者の腕の腕章に漢字を認めて、慌てて訂正する。
そのときにはもう既に姉は彼女の横に陣取っていて、自分の目で訪問者を確認していた。
「んー…なら、少し遊んであげましょうかね。」
「えー、母さんまだ着てないのにー…」
「夜の予行練習にはなるでしょう?」
姉は、どこから出したのだろう、短い杖を一振りした。
途端、訪問者の周りにカボチャがたくさん現れる。
窓の外の出来事に、妹はくすりと笑いを零した。
―― ぎゃぁ!!
訪問者のものであろう、すばらしい叫びが家の中に響き渡る。
魔女の慣わしとして、人の怖がる姿を観察するのは好きだった。
少女はにやにやと笑いながら、ふと、そのカボチャたちの異変に気がついた。
「…腐ってる…」
妹は、唖然として呟いた。
確かに、現れたカボチャの全てがハエを宿している。
「当たり前でしょう?新品は夜のお楽しみ…」
不敵に笑う姉に、少女は小さく溜息を吐くのだった。
「まだまだいくわよー」
姉はにっこりと笑って、さらに杖を振る。
「ぐぇー!!!」
先ほどと同じ順序。
階下から叫び声。そして妹の笑み。
最早、妹は窓を開けて身を乗り出していた。
面白い。
女と、カメラを持った男があわあわとその場を駆け回る。
「なかなか効果あるみたいで…」
言いかけて、直ぐに、異変に気づく。
「…くさいよ、姉さん。」
「今日の料理の野菜のあまり…というかカス?掃除、あとでよろしくね!」
妹の笑顔は引っ込んでしまった。
「もう!なんなのこれは!!」
女性の叫び声が、下から聞こえる。
妹は仕方なしに、姉は満面の笑みでその叫びに答えるのだった。
「トリックオアトリート。
ただしうちには、一般人に捧げるキャンディはございませんっ!」
…企画にお金をかけた割には、やらせだというクレームばかりが到着して、いいことがなかった水城可南子のレポートでした。
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後書き (作:風名 2009.9.24 up:10.5 )
えーと、我が校文芸部が一般作品を公募してたので だそっかなーと思って書いたけど
あまりにふざけてしまったので、却下した作品。
文学作品にはならず。 言葉のまとまりもなく。
校正して もちょっと表現をどうにかしたいところです。
文芸部のためには、 これを含めハロウィン作品を三つ書いたのですが、
これは 一番に自分の中で却下されました。
他の二つも、却下され次第 ホームページのほうに引っ張ってきたいと思います。
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